「教育先進国リポートDVD オランダ入門編」発売

Translate

2008年12月9日火曜日

医学部の質の維持

 前の記事で、オランダの大学が直面している、質の維持という課題について少し触れました。
 今回は、その一つの例として、医学部の例を挙げてみます。

 一方では学部の特徴を出さなくてはならない、他方では、スタンダードの質を維持しなければならない、という要請の中で、オランダの大学は、医学教育をどう進めているのでしょうか。

 オランダには、フロニンゲン、ネイメーヘン、マーストリヒト、ユトレヒト、アムステルダム、アムステルダム自由大、ライデン、ロッテルダムの大学に医学部があります。そして、それぞれ、教育プログラムにはかなり大きな差異がみられます。マーストリヒト大学は、1年生の時から、小グループでの事例ディスカッションと事例研究をもとにした「問題解決型学習」を看板にしています。ライデンは、その正反対で、はじめの4年間は、みっちり基礎理論を詰め込むやり方です。ユトレヒトでは、ちょうどその中間ですが、病院実習は1年生からすでに始まります。アムステルダムやロッテルダムでも、ライデンに比べると病院実習が早く始まるようです。大きくいえば、理論>実践、なのか、実践>理論なのか、という点で、教育者たちの考え方・立場の違いがあるようです。

 これだけ教育プログラムの異なる医学部ですが、全国の医師養成としての質を一定水準に保つために、どの大学も共通に学生たちに「進度テスト」を実施しています。

「進度テスト」は、1年生から6年生まで、すなわち、国家試験を受ける前の医学部の学生全員を対象にして、共通のテストを半年ごとに受けさせるものです。半年ごとに、もちろん、質問は毎回異なるテストが作られますが、すべての分野を網羅してそれぞれの学生が到達した知識を確かめるためのものです。

 ですから、1年生で初めてこのテストを受けるときには、10%も理解できない、という状況になります。

 このテストを半年ごとに受けることで、学生は、自分の知識がどのように増えていっているかを確かめることができます。テストの結果は、前回までのテスト結果と合わせて通知されますから、進度がわかるのです。
 このテストを受け続けることで、国家試験までの準備をするときの、重点の置き方についての材料にもなるでしょう。

 他方、大学側は、データを集めることで、自分の大学の学生が、どのような分野でどのように進度を挙げているかを確かめることができます。他大学との比較も可能でしょう。
 つまり、このような共通の尺度を持っていることによって、自分の大学の独自の教育プログラムの利点と欠点を発見でき、修正しながら教育活動が行えるという仕組みです。

0 件のコメント: