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2009年6月23日火曜日

パートタイム失業制度の効果とオランダ経済の見通し

 前々回4月22日に報告した「パートタイム失業制度」の効果についての報告が出た。
 
 「パートタイム失業制度」は、金融危機による不況下の失業対策として4月1日から施行されているもの。被雇用者の完全失業を回避し、経済回復後に熟練労働者を早く動員できるための策で、雇用者は、現在雇用している社員の就業時間を最大6ヵ月間、最大50%減らして、この間、給与の支給を半分にし、その失業部分については、国が、通常の失業手当と同じように70%の手当を支給する、というものだ。つまり、労働者側は、この制度によって、完全失業を避けることができ、給与減も最大15%で済む。

 この「パートタイム失業制度」は、非常に人気があったらしい。
 この18日に中央統計局(CBS)が出した報告によると、5月の失業者数は8000人にとどまり、4月の2万人に比べて上昇率がぐっと抑制された。この失業抑制は、明らかに、「パートタイム失業制度」の適用の効果であるという。現在、この制度の施行から3カ月目になるが、適用ケースは1万人以上あるという。

 その前々日16日に発表された経済分析局(CPB)の予測では、2010年の予算赤字は6.7%と記録的な大きさになり、また、失業は現在の4.6%を倍増して73万人、9.5%に膨らむ見込みだという。この計算だと、今後、月当たり2万5千人ずつのテンポで失業が進むということであるから、5月の8000人は、確かに非常に少ない。
 
 労働組合側にも、企業側にも歓迎されたこの制度だが、政府の資金がそろそろ底をついてきているらしい。今年の国際通商は15%以上減少の見込みで、オランダの輸出は17.25%減、輸入は14%減とのこと。最も大きな打撃は、すでに過去のものと見られているが、国家経済がフォワーディング業を始め商取引に経済基盤を持つオランダでは、諸外国の経済回復の見通しが立たなければ、自国の経済の見通しも立ちにくい。
 CPBの発表後、財務大臣は、長期の不況に備えた対策が必要であるとしている。

 現に、今朝の報道では、「パートタイム失業制度」の担当省である社会事象・労働省のドナー大臣は、この制度のために準備されていた3億7500万ユーロの追加資金はすでに使い果たされた、と発表。この制度適用は、今日23日付の申請までしか受け付けられないと決まった。
 労働組合や企業側には、制度無期限延長の強い要望があり、そのための資金をどうすべきかが来週国会で討議される予定だ。
 被雇用者の失業よりも、個人自営業主の収入減が激しいとの報告もある。

 言うまでもなく、この制度がここで中断となれば、次に来るのは、完全失業者の増大だ。そうなれば、政府の失業手当負担も増える。また、夏以降は、新卒者の就職難による失業者急増も予測されている。


 何らかの手が打たれることになろうとは予想されるが、国庫赤字が先に見えている状態では、資金捻出が困難を極めることであろう。経済不況をどう乗り切るか、いよいよ正念場となってきたようだ。

 

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