「教育先進国リポートDVD オランダ入門編」発売

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2012年2月6日月曜日

新時代の教育を垣間見る

いやあ、かなり興奮しています。
 先週、ある団体の視察の一環で、久しぶりにハーグ市の教育サポートセンターを訪れました。全国でも指折りの優れたサポート機関です。何かと日本からの視察があるたびにお話を聞かせていただいているので、専門家の方たちとも顔なじみになり、私の活動にも理解を示してくださっています。

 二つ、大変印象的な最近の動きです。

1.CITOによる「学力」発達モニターに加え、子どもの発達段階をスケールにした『観察』型の発達アセスメントが、ネット上の入力で、しかも、かなり細かい分析をしてくれ、さらには、安価で市販され始めています。これは、0歳から、つまり、乳幼児期からの、個々の子どもの発達を、6か月ごとのマイルストーンに書かれた指標を基にして、観察を通して記録・入力し、子どもの発達特性を可視化する、その結果、指導法を発達段階に対して適合させる、子どもの能力のプロフィールを知ることで、発達に対する刺激の与え方を分化させる、などのために使えるもののようです。
 確かに、これまでCITOが行ってきたモニターは、かなり努力はされているものの、やはり、学力的な能力に傾いていましたが、この観察型のアセスメントを補完的に使うことにより、より子供の適正に寄り添った指導ができるようにしているのではないか、と思います。

2.IPC(国際初等カリキュラム)という、実に時代を先取りした、、、しかし、よく見ると、イエナプランのワールドオリエンテーションの理念と全く同じ考え方に基づく新しい総合的な学習のためのカリキュラムが、広く普及し始めていることです。もともと、IPCは、オランダのシェル石油会社が、海外に散らばる職員の子弟のために考案し始めたものとか。つまり、国際人として育つ子どもたちのために、国境の枠を書けない、地理・歴史、そして、理科一般などの総合的な学習のための教材を作ろうとしたことがきっかけだったようです。その後、イギリスの大学などの協力を得、中身を見てみると、イエナプランもそうですが、かなり、MITのセンゲ教授らのシステム理論の考え方、ひいては、「学習する組織(学校)」の5つの原則などもふんだん自在に取り入れられている感じがします。もともと、イエナプランのワールド織えんてしょんと、センゲらのシステム理論は、ほぼオーバーラップするくらいに相性のいいものなのですが。IPCがすごいのは、それを、年齢別、他教科との接続、なども含め、従来型の学校教育に接続させ、しかも、デジタル化を含み、次世代教育の形で、今可能なツールを最大限に利用して、未来の総合教育として教材化していることです。
 もともとインターナショナルスクールをベースに開発されてきたものなので、世界中のインターナショナルスクール500カ所以上に普及しているとのこと。HCOでは、ハーグ市にあるインターナショナルスクールでの普及もサポートしています。
 同時に、オランダ国内の小学校でも、新時代の「グローバル教育」を目指して、ワールドオリエンテーションやシチズンシップ教育の教材として普及が始まっている模様。

 もともと、オランダには「教育の自由」があるので、先駆的な教材を導入しやすいという素地があります。イエナプラン、フレネ教育などの影響のもと、サークル対話、コーナー学習、共同学習は、ほぼどの学校でもやるのが当たり前。これは、IPCのようなグローバル教育を導入するのに最適状況です。

 すでに、オランダの小学校の教室には、ほぼ完全にデジタルボードが黒板ないしはホワイトボードに入れ替わって設置されていますし、先生たちも、ウィキペディア方式で集められた、ありとあらゆるデジタル教材へのアクセスを難なくこなすようになってきています。もともと、学校を対象に作られた「教材」は、教科書ではなく、「指導の仕方」をまとめたもので、先生たちの自由裁量によって、中身を豊かに膨らませていくことを奨励したものが多い。また、HCOをはじめとするサポート季刊は、教員たちが新しい教育法に取り組む際に、1~2年の期間をかけて、ワークショップやコーチングによって後ろからしっかり支えてくれます。

 こういう指導の仕方が、そもそも、システマチックだし、教科書教育的ではない。

 産業型社会の一斉画一授業から、脱産業時代の、個別の発達保障と事件尊重の教育への移行は、「グローバル教育」の名の下で、一気に、また、急速に進んでいくことでしょう。気になるのは、こうした動きに対して、下手に、過去に産業化に成功した日本よりも、ネット文化の普及によって先進諸国の実態を手に取るようにしることができるようになったAALAの新興発展国・開発途上国の方が敏感であることです。なぜなら、こういう国には、国のリーダーたるべき人は欧米でエリート教育を受けるのが当たり前という伝統があり、国内のエリート教育でも、英語などの外国語が大変重視されてきたため、国内産のエリートたちの間の英語能力が大変高く、同時に、メンタリティでも、「批判力」(自分の頭で物事を相対的・客観的に考えることができる・それを言語化できる)を持った指導者が、絶対数として圧倒的に日本よりも多いからです。

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