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2009年9月5日土曜日

オランダの政党政治 その2 政治資金について

 ところで、オランダの選挙運動は世界で最も安い選挙運動に属しているのだそうだ。

 2003年の選挙運動支出として報告された額は、政権の最大与党CDA(キリスト教民主連盟)が85万ユーロ(日本円にして約1億1300万円)、野党最大のSP(社会党)でも100万ユーロ(約1億3400万円)だった。

 政治資金の使途表示を義務付けられていない日本の政党の場合、各政党がどれほど選挙運動に支出しているのかについてのデータを取得するのは容易ではない。
 だが、政党収入は、2002年、最大与党であった「自民党」の場合、約230億円に上っており、満期4年で換算すれば、およそ1兆円だ。支出の内訳はわからないが、政党資金の大半が選挙キャンペーンに使われること、を考えると、確かに、オランダの選挙運動支出は、日本の政党が扱う資金額に比べて「桁はずれ」に小さい。日本の衆院の議席数480とオランダの第2院の議席数150との違い、また、人口比8対1を考慮に入れたとしても、だ。

 政党の収入減は、ふつう、党員会費、議員給与からの拠出、献金・協賛金、政党内部の留保資金、パーティやバザーなどによるファンドレイジング、国庫からの政党交付金などがある。そして、これらの収入内訳を見てみると、オランダと日本の政党活動の中身の違いが、さらに詳しく見えてくる。

 まず党員会費。
 オランダは、政治資金に占める党員会費の率が約半分で、欧州地域では一般に4分の1といわれていることと比べても際立って高い。日本の場合は、党員会費が政党資金に占める割合は、およそ3-7%の間だ。オランダの方が日本に比べて党員への依存度が高いのは確かだと思われる。それは、一般有権者の、日ごろからの政治意識の高さとも関係があるだろう。
 また、オランダの場合、党員の会費(寄付金)は、慣行として、所得別に会費を決めるようだ。つまり、低所得者の場合は低い会費で党員になれる。

 次に、議員給与からの拠出だが、これは、一般に「政党税」という名でよばれ、議員給与の約10%が徴収されている。ただし、社会党の場合は例外で、議員も党員も、非営利の活動であるということを原則としている社会党は、議員はいったん給与の全額を党に納入し、その後、手当として再配分される仕組みをとっている。また、保守政党であるCDA(キリスト教民主連盟)とVVD(自由民主党)では、「政党税」の制度を取らない代わりに、「献金(寄付)」を認めている。両党の献金資金が占める割合は、それぞれ1%と6%。企業との密着度が高く最も献金収入が多い日本の自民党の15.6%に比べると、大きな差がある。

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 さて、興味深いのは政党交付金だ。

 オランダは、長く政党交付金の支給がなく、政府からの補助は、公営放送の電波利用などに限られていた。しかし、現在では、年間総額およそ1500万ユーロ(約20億円)の政党交付金が支払われている。日本では、国民一人当たり250円が政党交付金として支出されており、年間総額はおよそ320億円、オランダの15倍に上る。

 日本の政党交付金は、50%ずつが、議員数比例配分、得票数比例配分で分けられる。また、使途制限はない。

 他方、オランダの政党交付金は、活動の具体的な内容は問わないが、使途を明示することが義務付けられている。交付金の目的として、①.政治問題研究活動資金、②青少年の政治教育・研修活動、③党員への情報提供、④外国の姉妹政党とのコンタクト維持などで、選挙運動資金へのしようは、最近の改正で認められるようになった。
 また、政党が(憲法で禁止された)「差別」をしている場合には、政党交付金は停止される。(実際に、非常に原理主義的なキリスト教の理念を立場としているSGPの場合、女性党員の被選挙権を認めていないために、交付金が停止されている。)

 また、オランダの政党交付金には、議席の有無にかかわらず、すべての政党に同額に認められた「一般交付金」がある。これは、現在、党当たり年額18万ユーロ(約2400万円)だ。各党に配分される「一般交付金」を差し引いた残額が、「特別交付金」として、議席数比例と党員数(得票数ではない!!!)比例で各党に配分される。

 さらに、この政党交付金は、国が決めた最低額を政治問題研究資金として支出することが義務付けられている。その額は、「一般交付金」のおよそ70%、議席当たりの「特別交付金」のおよそ25%に当たる。現在の額は、前者が約1600万円、校舎1議席当たりの額約170万円に相当する。すなわち、1議席しか持たない政党でも、毎年、1800万円程度の資金が、政治問題研究の資金として受給されていることになる。

(この項続く:有権者の政治参加意識を高める仕組み)
 

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